キジログ@愛

鴨宮☆隆がその半生を綴るブログ

タバコの味

タバコの味

初めてタバコを吸ったのは中学生2年生の時。親父の吸っていたマイルドセブンスーパーライトを1本くすね、築30余年という古びた自宅の2階の窓から体を半分以上乗り出して火を付けた。そのときなぜタバコを吸ってみようと思ったのかは覚えていません。でも、あの時感じた大人の味を今でもふと思い出すことがあります。

今でこそ観光地のとして認知されているこの町ですが、私が幼いころは造船所しかないただのさびれた町でした。高台にある公園から見える海の色は、子供が遊ぶゴムボールの派手な蛍光色とは対照的にいもくすんだ灰色をしていました。造船所の終業を知らせる汽笛の音は、毎日夕方5時きっちりに町中に響き渡りました。それは外で遊ぶ子供たちへの帰宅を促す合図でもあります。琥珀色に染まった町並み。豆腐売りのラッパの音。各家から漂うゆうげの香りを鼻いっぱいに吸い込みながら、お腹をすかせた子供たちは狭い路地を抜けてそれぞれの家へと駆け足で帰ります。そして夕飯の支度をする母親の背中に向け、今日は公園の野球で勝ったの、負けたの、そんな話をして。

中学生にもなると下町の子供たちは徐々に悪いことを覚え始めます。数年前まで純真無垢な笑顔で走り回っていた公園は、出来損ないを自覚した不良たちの溜まり場と変わってゆきます。誰が始めに、どこから持ってきた、なんて事も考えないうちに仲間内にタバコが広まりました。セブンスター、マールボロ、マイルドセブン。当時は自販機で誰でも酒やタバコが買えました。私も子供の頃はよく父親にスーパードライやマイルドセブンを買いに行かされました。今はこれダメなんですって。時代ですね。

私は比較的真面目な方でしたから、周りの友人がタバコを吸っていてもそれに乗じることはありませんでした。・・・しばらくは。しかしそのうち未知の世界への、大人の世界への興味が抑えきれず冒頭のような感じでタバコを吸ってしまったのです。煙い、不味い、クラクラする。「タバコを吸って良い事なんて一つも無い」なんて知っていたし、今でも変わらずそう思っていますが、でもあのとき感じた特別な何か、新しい空気、大人への扉を少し開いてしまったような感覚、知らないどこかへ連れて行かれるような怖さ、背徳感、自由、興奮、その感覚は後にも先にもこの時以外に感じたことが無いように思います。「庇護を受ける子供」だった自分が「自らの責任で立つ大人」の道へ急に放り出されたような、そんな感覚だったのかも知れません。いずれにしても当時の私にとってそれは強烈な体験でした。

大人になり「子供より大人の方が面白い」と思うのは、その行く先を自らの責任において選択できるという点に尽きます。酒タバコはもちろん、仕事、勉強、恋人、友人、生活、挙げればキリが無いですが、それらの選択を自らの責任において成す事ができるのです(もちろん全てがそうできるとは言いませんけど)。つまりはよく言う「自由には責任が伴う」というやつですけど、逆に言えば自由を得る為には責任を負えば良いわけで、そんな責任なら私はいくらでも負っていきたい。

中学生でマイルドセブンの味を覚えて以来、数回の増税を経てもなお、私はタバコを吸い続けています。年に一度の健康診断で喫煙歴○○年と書く度に、まあ確かに思うところが無いわけじゃないけど、それでも自分の責任で吸い続けていた事ですから。今の所後悔はしていません。 とはいえ病気に対する若干の恐怖は否定しませんがね。(震え)

 

以上、さっきタバコを切らして自販機に買いに行ったときにふと思い出した昔の話です。なお私は最近では1mgの紙巻きメンソールとアイコスを吸っています。ですので最盛期に吸っていたセブンスター(14mg)よりはいくらか健康的なハズです(震え)
そういえば子供の頃からの親友は中学時代からずっと赤マルを吸っています。コイツは早死にするだろうな。たぶん。

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