ネット黎明期の話(その3) - 「BBS」「ICQ」「ポスペ」
(初稿:2017-04-25)
(前回からの続きです)
【前回までのあらすじ】
パソコンを手に入れたキジ少年(私)はネットで初めてモロ画像を見るのであった・・・
☆今回は当時のネット・コミュニケーションについて回想します☆
BBS(掲示板)に記念カキコ
ネット上におわす八百万の神々(=無数のエロ画像)に出会っては保存、出会っては保存を繰り返し大変充実した日々を過ごしていた私。
私『ネットへの接続、それは世界を手に入れる事と同義。』
当時の青年達は皆そう思ったでしょう。なぜならばネットに繋げば電話代だけでいくらでもエロ画像を見られるのです。もはやビデオ屋にエロビデオを借りに行く必要がなくなりました。
ネット環境を手に入れた青年達はもはや「18禁」と書かれた暖簾をくぐりそこにいる無言の紳士達と互い目線を合わさないように気を配りながら好みのエロビデオを探すという苦行を強いられることは無くなったのです。
しかもビデオ屋の店員が女性だった日には・・・。多感な青年(童貞)であった当時の私には女性店員に「私が借りたいと思っている性癖丸出しのエロビデオ」を手渡すなんて事は到底出来ません。
まぁおじさんとなった今ではあえてエグいハードコアビデオを選びわざと女子店員のいるレジに並んで堂々とパッケージ表面を上して女子が見やすいようにそれを差し出しつつ彼女の表情をガン見して機微な反応を伺いながらその表情の変化を脳裏に焼き付け一粒で二度美味しい思いをする事ができる程度の紳士となりましたが成長ですかねこれって。
さて時は世紀末、突如として「ミレニアム」なる言葉が登場しテレビではコメンテーターが連日「ミレニアムです、新世紀なんです」と誰もが発言していた時代です。
この頃になるとパソコンを購入しインターネッツを始める友人も増えてきます。
そのうち友人の一人がホームページを作って「BBS」を開設したので私に何か書き込んでくれと言ってきました。
余談ですが「BBS」という言葉ですが最近はあまり聞かない気がします。
一応説明しますがこれは”Bulletin Board System”の略で単に「掲示板」ぐらいの意味ですね。
ここで当時の掲示板事情を説明します。
掲示板と言えば現在では”2ちゃんねる”に代表される大型掲示板が主流ですが、当時は個人管理の小さなコミュニティーで形成されるローカル掲示板が大多数を占めていました。
(※2ちゃんねるの前身である”あめぞう掲示板”はすでに存在していましたが、ここはごく一部のコアなネット民だけがあつまる非常にアンダーグラウンドな場所で、当時の私には全く理解できない世界でした)
そして無料レンタル掲示板サービスの筆頭といえば「teacup掲示板」です。
(驚いたことにこのteacup掲示板は現在でもサービスを継続(20年以上)しているようです。)
管理に飽きた管理人から放置された板は数知れず「teacup掲示板」(キジ)
(画像引用元:BBS teacup 20年目の老舗掲示板が黒字で存続できる理由 - Z daily news)
友人に言われたので適当にカキコをするんですが、いかんせんローカル過ぎて普段から会ってる地元のリア友数人しか板に存在しません。
普通に会って話せばよくない?皆そう思いながらもキリ番踏んだら記念カキコ(※)したりとか今となってはよく分からない世界がそこには存在していました。
(※)「キリ番」とはホームページのアクセスカウンター(ホームページを閲覧した際に何人目の訪問者かをカウントしてページ上に表示するcgiツール。当時の個人サイトにおける設置率は(私の体感値では)89.3%にも及んだ)で出てくるキリの良い数字やゾロ目の事。これらに出くわした場合それを記念してBBSに書き込みを行わなければならないという謎ルールが管理人により各所で強制されていたのは有名な話。
テレホタイムは 君を探す「ICQ」
当時は暇でしたのでよくゲームセンターに行って遊んでいたのですが、そこで知り合った友達から「ICQ」なるものの存在を教えて貰いました。
これは今でいう「LINE」に近い、というかほぼ同じ物です。ネットを介して1対1でメッセージのやりとりをする、いわゆるメッセンジャーソフトの元祖ですね。
当時のメッセンジャーソフトはこの「ICQ」と「Yahoo!メッセンジャー」の2強でした。
メッセージ受信時のサウンド「エッオー!」が今でも忘れられない。
ちなみにICQという名前は「I seek you」から来ているそうです。(キジ)
(画像引用元:窓の杜 - 【NEWS】「ICQ」の最新バージョン2000a Betaがリリース)
また、この頃にはNTTの「テレホーダイ」というサービスが始まっており、私はそれに加入していました。
テレホーダイとは読んで字のごとく、あらかじめ登録した2件の電話番号に対して夜23:00から朝8:00まで「月額1800円で電話し放題」となるサービスです。つまりこの電話番号にプロバイダのアクセスポイントの電話番号を登録しておけば夜中はネットし放題となります。通称「テレホ」。アナログ回線を使用した当時のネット民はかなりの割合で加入していました。
テレホタイムの開始となる23時になると一気にトラフィックが混み合ってエロ画像の表示が極端に遅くなったことを今でもよく覚えています。
さてゲーセンの友達に言われるままICQをインストールして会話するんですが、これが非常に楽しい。テレホタイムは毎晩ICQで会話をしておりました。
時には「オール(テレホタイムぶっ通しで会話)」なんていう若さに任せた無茶もしたものです。
ICQでは通っているゲーセン内での男女友人間の恋模様などをよく話しました。
というか私の場合は他人の恋話を一方的に聞かされるだけでしたが、それでも思い返せばこの頃こそ私の青春時代と言えるでしょう。
まぁ私は女なんかに興味なかったですからね。(表面上は)
ゲームを極めるべくひたすら修行を積んでいましたから。(表面上は)
ピンクベアーの消失「ポスペ」
クールを気取りつつも本当は女子と会話がした過ぎておかしくなりそうだった当時の私(童貞)。
「パソコンでゲームの情報交換をしようよ、お互いにとって有益だよね?」
という体でしつこく女子にメアドを聞き続け、「こうなればもう残された手は土下座しかない」という一歩手前ぐらいの所でなんとかメアドを教えて貰えました。まぁ慈悲ですね完全に。
女子「あー(メンドクセェ)・・・えーと、キジくんはポスペやってる?」
私『ポスペ?オナペならいくつかお気に入りがあるけど・・・』
女子「チッ・・(死ねよ)・・・ポストペットっていうメールソフト。」
私『え?・・・ああ、やってるよ!知ってるよ!今時当然だよねー!』(焦り)
女子「こいつマジ死ねよ・・・・・・・」
私『(いや、声に出てますけど?)』
「ポストペット」通称「ポスペ」は当時一部で流行したメールクライアントで、かわいい熊のキャラ(名前はモモちゃん)がお相手にメールを届けてくれるというなんとも女子受けのするソフトでした。
ちなみメールサービスは現在では終了しているようです。ただキャラだけは何かしらのサービスに使われているらしく、最近のモモちゃんはインスタに投稿したりツイッターでつぶやいたりしているそうです。時代ですな。
詳細は引用元の記事をご参照下さい。(キジ)
画像引用元:ふとPostPet(ポスペ)のことを思い出した:今どうなってるのか? | 創kenブログ
帰宅後、女子の機嫌を取るためだけにポスペのソフト(体験版)をインストール。
数キャラいるペットの中から私は「ロボット」を選択。
早速女子にメールを送ってみました。
ロボ『女子さんに初メールです!届いたかな?ちなみにボクはロボのキャラを選んだよ!女子さんはなんのキャラなのかな?女子さんのイメージだとモモちゃんかな?』
※ロボがメールを配達するアニメーションが出てメール送信
モモ「届いた」
※モモちゃんがメールを運んでくるアニメーションで受信
ロボ『女子さんは今度はいつゲーセンに来るの?ボクは明日行くよ!女子さんが来るなら明後日も行くよ!ていうか毎日でもいくよ~なんちゃって(笑)』
モモ「未定」
このようにポスペを使うと女子と大変楽しくメールのやりとりが出来るわけです。
なお当時から現在に至るまで私が女性と何かしらのメッセージを交換する際に「謎の温度差」が発生いたしますが大丈夫、私もう諦めてるから。(慟哭)
さてこのポストペット、「専用のメールクライアント」を使えばキャラのアニメで楽しくメール出来るのですが、これを「一般のメールクライアント」で受信した場合はどうなると思われますか。
もちろん「一般クライアント」ですとキャラ表示機能はありません。
当時、私は一つのメアドを「一般クライアント」と「ポスペ専用クライアント」の二つで共用しておりました。
そんな運用でしたので、ある日間違って「一般クライアント」で女子のポスペメールを受信してしまったのです。
私『あ、女子さんからメールだ!ウヒィ』クリック
文面「ねぇ聞きたいんだけどキヌ夫くん今度いつゲーセン来るか分かるかな?キジ君は友達だから知ってるよね?(添付ファイル14.62kb)」
私『いつになく長文だなぁ女子さん♪ キヌ夫?ヤツは今週は別のゲーセンで女子数人と遊ぶって言ってたっけな。ってか添付ファイルがある。なんだろう?』クリック
添付ファイル「ファイルを開くプログラムを選択して下さい」
私『おかしいな?見たことのないファイル名だし』
万が一拡張子が偽装された女子さんの自撮りエロ画像だったらと思い念の為「ペイント」で開いてみましたがどうやら画像ファイルではない様子。テキストエディタで開いても意味不明の文字列しか表示されません。
私『まいっか。「キヌ夫今週は別の所行くって言ってたよ。それよりも女子さん次回はいつ(略)」っと。送信~』
文面「そうかー。じゃあアタシもそっちのゲーセン行ってみる。ところでアタシのモモちゃんが帰って来ないんだけどまさかおまえポスペじゃないソフトで受信とかしてないよね?」
私『え?そういえば今はポスペじゃないのでメールしてるよ。じゃあボクも女子さんが行くならそっちのゲーセンに(略)』
文面「おおおおおああああああああェェェィィ!!!!!!
テメー死ね!死ね!!!」
私『何!!?どうしたの???』
文面「死ね」
その後女子さんにいくらメールを送っても返信メールが来ることはありませんでした。
・・・何が起きたのかを説明します。
先述の通りポストペットは「専用のメールクライアント」でしかペットでのメールのやりとりが出来ません。
ポスペメールを専用ではない「一般メールクライアント」で受信するとモモちゃんは添付ファイルに変換され表示されてしまいます。
そしてただの添付ファイルと化したモモちゃんは送り主の元に帰れなくなってしまうのです。
添付ファイルを相手に返信しても無駄、モモちゃんは決して復元できません。
その様はまさに電脳の異次元空間へ吸い込まれ消失したかのごとき。
こうなると送り主は空っぽになったペットの部屋をただ見つめるしかなくなるのだ。
※実際は一定期間が経過するとペットがどこからともなくフラっと帰ってくるそうです。それはそれで怖い。
さて、その後のゲーセンライフですが、友人のキヌ夫が女子達とチャラチャラ楽しそうに「サンバDEアミーゴ」をプレイするのを尻目に私はただひたすら格闘ゲームに打ち込んでおりました。
キャラ・私『十年早いンダヨォォォァァァァオ!』(発狂)
あれから余裕で「十年以上」経過しておりますが、未だに人生に勝機が見えない、そんなおじさんになりました。落ち込むこともあるけれど私は元気です。
return to the Ero-Site ~ 安住の地への回帰
日増しに強まる女子達からの冷たい目線に耐えられなくなった私は、とうとうゲーセンに行くのを止めました。
私『ゲームやってるやつなんてバカだね。時間の無駄だぜ?』(涙目)
そしてまた繰り返す、ただエロ画像を保存するだけの日々。
世間の残酷さを知り、結局最後は安住の地(エロサイト)へ戻ってきてしまう。
しかし、私もいつしかそんな日々に虚しさを覚えるのであった。
私『おれは一体何をやっているんだ・・・』(※エロ画像で抜いている)
モニタに写るエロ画像を呆然と見つめる私。以前はあれほどの渇望を捧げた神々。
しかし、私はもはや何も感じなくなっていた。
私『神は死んだ・・・God(ero-gazo) is dead.』
もはや神への信仰は消え失せたのだ。(※エロ画像に飽きただけ)
その一方で、ポスペ女子の冷酷な目線を思い出しなぜかゾクゾクする私がいることに気付くのです。
「やっぱり生身の女子がいい。」
そう理解した私は、新しい何かに出会うべくネットサーフィン続けます。
そして・・・ 私は・・・ 見つけたのです・・・
ようこそ!
エキサイトチャットへ!
そこで私は...
出会うことになるのだ...
生身の女子に...